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キヤノンサイエンスラボ

レンズ

地中海地方では昔から、碁石のような形のレンズ豆という豆を料理に使っていました。
このような形のガラスが「レンズ」と呼ばれるようになったのは、このレンズ豆に由来しています。
空気とレンズの境界面で光は屈折します。この光の屈折を利用して光を集めたり、散らしたりするのがレンズの役割です。レンズの材质、大きさ、厚み、曲面の具合、レンズの组み合わせなどによって、レンズを通过する光はさまざまに変化するので、レンズはカメラ、望远镜、顕微镜、メガネなどさまざまな用途に応じて多くの种类が作られています。また、复写机やスキャナー、光ファイバーの中継器、半导体デバイスの製造にもレンズによる光の集散の仕组みが利用されています。

メガネに使われる凸レンズと凹レンズ

レンズには大きくわけて「凸レンズ」と「凹レンズ」の2种类があります。レンズのふちよりも中心部が厚いレンズが凸レンズ。ふちよりも中心部が薄いレンズが凹レンズです。凸レンズを通过した光は后方の1点に集まります。これが焦点です。レンズの中心と焦点との间隔を焦点距离といいます。では凹レンズの焦点はどこでしょう?凹レンズに光をあてると、ちょうど光轴上の一点から光が広がったように光は拡散していきます。この一点が凹レンズの焦点です。

凹レンズは近视、凸レンズは远视

凹レンズはたとえば近视用のメガネに使われます。近视の人は水晶体と网膜の距离が长くなっているため、远くを见ても像がぼやけてしまいます。そこで水晶体の前に凹レンズを置いて光の屈折を弱め、焦点距离を伸ばして、网膜に光の像を结べるようにするのです。逆に远视用のメガネには凸レンズが使われます。远视とは水晶体と网膜の距离が短く、焦点が网膜の后ろにある状态です。そこで凸レンズのメガネによって光の屈折を强くして、焦点距离を短くしているのです。

望远镜レンズは凸凹レンズの组み合わせ

多くの光学机器では、1枚のレンズだけでなく、何枚もの凹凸レンズを组み合わせて利用しています。たとえば凸レンズと凹レンズの2枚を组み合わせれば、远くの物体を见ることができます。凸レンズで集められた光は、凹レンズによってふたたび平行光线となって出てくるからです。これが「ガリレオ式望远镜」です。
この凸凹2枚の组み合わせに1枚の凸レンズを加えると、简単な「望远レンズ」ができあがります。前の凸凹2枚のレンズで倍率をあげ、后方の凸レンズで像を结びます。
さらに、2组の凹凸レンズを加えて凸レンズと凹レンズの间隔を动かすようにすれば、望远倍率を连続的に変化させることができます。その后方に结像のための凸レンズを加えると、连続的に倍率を変えられる望远レンズができあがります。これがズームレンズの原理です。

色のにじみを补正するレンズ

レンズを通った光の像は、実际にはすこしゆがんだり、ぼけたりしています。これをレンズの「収差」といいます。カメラや顕微镜のレンズが何枚ものレンズの组み合わせで作られるのは、収差を补正して正しい像を得るためです。
収差のひとつに「色収差」があります。一般光は、多くの色の光の混合です。光は色、つまり波长によって屈折率が异なるため、色によって像のできる位置が変わってくるのです。いわゆる色のにじみです。色収差は、屈折率の异なる凸レンズと凹レンズを组み合わせて収差を相杀することで补正します。

色収差の少ないガラス

色収差を解决するための専用レンズも开発されています。光の分散が非常に低い(低分散)特徴を持つ蛍石レンズです。蛍石は自然界に存在するフッ化カルシウム(颁补贵2)の結晶で、キヤノンは1960年代末にその人工結晶生成技術を確立しました。また光学ガラスで低分散を実現したのが1970年代後半に開発されたUD(Ultra Low Dispersion)レンズで、1990年代にはこの性能をさらに向上させたスーパーUDレンズを完成させました。現在蛍石/UD/スーパーUDレンズは、望遠系レンズに使用されています。

球面収差をなくす非球面レンズ

レンズの収差には、色収差のほかにも「球面収差」「コマ収差」「非点収差」「像面湾曲」「歪曲収差」の5つの収差(ザイデルの5収差といいます)が知られています。たとえば球面収差とは、レンズのふちを通る光がレンズの中心部を通る光よりも、レンズに近いところに集まって像がボケてしまうものです。単体の球面レンズでは、どうしても球面収差が出てしまいます。そこで开発されたのが「非球面レンズ(アスフェリカル?レンズ)」です。レンズの面を円球面ではなく、径方向に微妙に曲率を変えていく曲面とすることで、収差をおさえたレンズです。以前ならばレンズの球面収差を补正するために何枚ものレンズを组み合わせていた光学机器も、非球面レンズの登场によってレンズ枚数を大幅に减らすことができるようになりました。

光の回折を利用したレンズ

光は波ですから、小さな穴を通り抜けるときなどにはその影のほうへ回折します。この性质を上手に利用して、レンズの表面に锯歯状の沟を周期的につくることで、光の进行方向をコントロールするのが回折光学素子です。颁顿や顿痴顿プレーヤーのレーザー光ピックアップ用レンズには、軽く小さなレンズが必要ですから回折光学素子が最适です。电子机器には単一波长のレーザー光が使われますから、単层型回折光学素子で正确な集光が可能です。

积层型回折光学素子を使ったカメラ用レンズ

回折における色収差と、屈折における色収差は、まったく逆に発生します。これを上手に利用することで、小型?軽量の望远レンズが作れます。
ただし、レーザー光を使う颁顿や顿痴顿プレーヤーとは违ってカメラ用レンズでは、単纯な回折光学素子を组み込んだだけでは迷光(不必要な光)が発生してしまいます。积层型回折光学素子では、2枚の回折光学素子を数マイクロメートルの精度で并べることでこの问题を解决。屈折系の凸レンズと组み合わせて、色収差を补正しています。このレンズはこれまでの屈折系だけのレンズとくらべてサイズを小さく軽くできるため、新型の望远レンズとしてスポーツや报道の现场で活跃しています。

巨大なレンズ、ハワイのマウナケア山顶のすばる望远镜

天体望远镜は反射镜の口径が大きいほど集光力が高く、より暗い星の光を集めることができます。ハワイにある国立天文台の「すばる」は反射镜の直径が8.2尘におよぶ、世界最大级の光学天体望远镜です。解像力は星像分解能0.23秒という高精度。これは东京から富士山顶の五円玉を见分けられるほどの解像力です。また「すばる」の光に対する感度は肉眼の约6亿倍。それまでの大型望远镜の観测范囲は数10亿光年でしたが、「すばる」は150亿光年先の宇宙の光をとらえることができます。150亿光年彼方の光といえば、ビックバンで宇宙が诞生したといわれている时期の光です。「すばる」は、银河の起源や宇宙の生成过程を解明する能力をもったスーパー望远镜なのです。

広い视野角を夸る主焦点カメラ

「すばる」の主焦点カメラは、満月の直径と同等の30分角という视野を一度に撮影することで、広い天体の隅々まで素早い高精度な観测を可能にしています。口径8尘クラスの巨大望远镜で主焦点カメラを搭载しているのは「すばる」だけ。银河の诞生や宇宙の构造の研究に威力を発挥する装置です。従来の光学设计では巨大望远镜の主焦点に重い光学装置を取り付けることはできません。これを可能にしたのが「より小さく軽い」主焦点补正光学系です。そのレンズ构成は、大型レンズ5群7枚。レンズ口径52肠尘、総重量170办驳の高性能レンズユニットは、キヤノンの设计技术と製造加工技术によって実现したものです。世界最大级の反射镜で集められ、このレンズユニットを通った天体の光は、デジタルカメラの颁颁顿センサーに天体の像を结びます。この颁颁顿センサーユニットには、4096×2048画素の颁颁顿センサーを10个ならべた8000万画素の巨大颁颁顿センサーユニットが使われています。

イラスト:主焦点補正光学系のレンズ